ある街に、誰もが知る伝説のお店があった。
名を「超太っ腹食堂」という。
その店の噂は、開店初日から瞬く間に広がり、街中の話題をさらっていた。
その理由は至極シンプル――店主が驚くほどの太っ腹だったのだ。
店主は、見た目も名前通りの豪快な男だった。
体格は大きく、いつもニコニコと笑顔を絶やさない。
彼のモットーは「お客さんに喜んでもらえるなら、いくらでも!」という、太っ腹精神そのものだった。
初めて店に来たお客さんが驚くのは、メニューに書かれた金額だ。
なんと、どの料理も100円。
信じられない値段設定だが、それだけではない。
注文した料理のボリュームが異常だったのだ。
例えば、カレーライスを頼むと、通常の店では考えられないほどの山盛りのカレーが皿に乗せられ、天井に届くかの勢いで積み上げられている。
さらに、セットで唐揚げやらサラダやらデザートまでが自動的についてくる。
そしてそのすべてが100円。
お客たちはその太っ腹ぶりに驚き、次々と訪れるようになった。
ある日、一人の常連客が「今日のカレー、量が多すぎて食べきれなかったんですけど…」と遠慮がちに店主に伝えた。
普通の店なら、「残さず食べてください」くらいの対応だろう。
だが、この店の店主は違った。
「え?量が多すぎたか!それは申し訳ない!じゃあ、次回はカレーの量を少し減らして、その分サイドメニューを増やしておくよ!」
これには客も言葉を失った。
減らすどころか、逆に増やすとは…!
そしてその約束通り、次回来店したその客は、少なめのカレーと共に巨大なステーキ、巨大な天ぷら盛り合わせ、さらにはデザートのプリンアラモードがテーブルいっぱいに並べられていた。
全て100円で。
その驚異的なサービスは口コミで広がり、遠方からも多くの人が「超太っ腹食堂」に足を運ぶようになった。
店は毎日大盛況。
行列ができ、待ち時間は1時間を超えることも珍しくなかった。
それでも、誰一人として文句を言わない。
何せ、あのボリュームでこの値段なのだ。
行列に並ぶことなど気にもならない。
しかし、店主の太っ腹ぶりはエスカレートしていった。
ある日、老夫婦が来店した際、「お金があまりないので、何か軽いものを頼めますか?」と言うと、店主は笑顔で答えた。
「お金なんていいんだよ!せっかく来てくれたんだから、今日はサービスだ!」
そして、老夫婦のテーブルに運ばれてきたのは、巨大な寿司桶に山盛りの海鮮丼、特大の焼き魚、さらに豪華なデザートプレート。
二人は目を丸くして、ただただ食べるしかなかった。
しかし、これが店主の信念だった。
「喜んでもらえれば、それでいいんだ!」
そんな店主の姿勢に多くの人が感動し、超太っ腹食堂はさらに人気を集めた。
だが、問題があった。
この驚異的なサービスを続けるには、当然ながら経費がかさむ。
仕入れにかかるコストは日に日に増え、店主の懐も寂しくなっていった。
それでも、彼はサービスをやめることなく、むしろさらに太っ腹な提供を続けていた。
ある日、ついに店主の太っ腹が頂点に達する事件が起きた。
店の常連客が「今日は給料日だから、ちょっと贅沢していいですか?」と頼んだのだ。
店主は「それなら特別メニューを用意してやる!」と意気込んだ。
そして、その特別メニューとは、なんと「食べ放題コース」だった。
その日は、特大のステーキ、エビフライ、巨大ピザ、さらには寿司までが次々と運ばれてきた。
食べきれない分はお持ち帰りまでOKという太っ腹ぶりに、客たちは歓声を上げた。
もちろん、料金はいつも通り100円。
「これ以上ない贅沢だ!」とみんなが感激する中、店主の顔にも満足そうな笑みが浮かんでいた。
だが、その笑顔の裏で、店の財政はついに限界に達していた。
翌日、店主は帳簿を見ながら頭を抱えていた。
毎日の仕入れ費が膨大になり、店の売上はほぼゼロ。
むしろ赤字続きで、いつかはこうなるとわかっていたが、彼は止められなかった。
その夜、店のシャッターは静かに下ろされた。
張り紙にはこう書かれていた。
「店主の太っ腹が限界に達しました。しばらくお休みします」。
常連客たちはその張り紙を見て驚いたが、同時に「まあ、あれだけサービスしてたら仕方ないか…」と納得するしかなかった。
店主はしばらくの間、店を閉めていたが、街の人々からの励ましの手紙やメッセージが届き続けた。
みんなが口を揃えて言うのは「またあの太っ腹なサービスを受けたい!」ということだった。
そして数か月後、ついに「超太っ腹食堂」は再びオープンした。
だが、今回は少しだけメニューが変わっていた。
100円だったすべての料理が「300円」に値上がりしたのだ。
客たちは一瞬驚いたが、それでもあの驚異的なボリュームは健在であり、300円でも十分に安すぎる。
こうして、太っ腹すぎて一度は潰れた店は、再び繁盛することとなった。
店主は相変わらず笑顔で「お客さんに喜んでもらえるなら、いくらでも!」と豪快に言っているが、心のどこかで「さすがにもう少し慎重にやらないとな」と学んだようだ。
それでも、街の人々にとって「超太っ腹食堂」は、いつまでも特別な場所であり、店主の太っ腹精神は伝説となって語り継がれることだろう。
記事一覧へ