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「考え方なんて人それぞれ」古代ギリシャのソフィスト

当サイトの前章でも述べたが、「万物の根源は水である」と唱えたタレスが生きていたのは紀元前6世紀である。

その当時のギリシャの哲学者の間では、「この世界はどのようにして成り立っているのか」を考えることが流行っていた。

その後、紀元前5世紀になると、ギリシャとアケメネス朝ペルシャ(今のトルコなどの国々)との間にペルシャ戦争が勃発。

ギリシャが勝利を収め、戦いでは市民階級の活躍が大きかったこともあり、アテネでは一般市民も政治に参加できるようになる。

こうなってくると哲学史的には、世界の成り立ちのような自然(ピュシス)を考える時代から、法律など(ノモス)を考える時代に移り変わっていく。

さて、当時のアテネの一般市民の中には政治家を志す者もいたが、そのためには相手を説得するための弁論術や教養が必要だった。

その弁論術や教養を教えた教師たちのことをソフィストと呼んでいる。

ソフィストの中で最も有名なのがプロタゴラス(紀元前5世紀頃)だろう。

(下に続く)




「人間は万物の尺度である」という言葉を残したとされる。

これはどういうことかというと、例えば夏の職場でエアコンを26度に設定していたとする。

痩せ気味の女性は室内が寒いと感じるが、小太りの男性は室内が暑いと感じる。

室内温度一つとっても、みんなに共通の真理はなく、人によって考え方や感じ方は異なる。

ということであり、これを相対主義という。

簡単に言えば、「人それぞれ」ということである。

相対主義は、人々の価値観の違いや国によって法律や宗教が異なることなど、多様性を認める寛容さがあった。

と同時に普遍的な道徳観を打ち消してしまうという問題点もあった。

例えば、先ほどの夏の職場にいるのが全員ソフィストのような人だったらどうなるだろうか。

暑がりな小太りの男性が「人それぞれだよ」とエアコンの設定温度を16度まで下げた。

すると寒がりな痩せ気味の女性が「人それぞれだわ」とエアコンの設定温度を28度まで上げる。

ここでエアコン嫌いの部長が参戦し「人それぞれっしょ!」とエアコンを止めた!

その後も職場にはリモコンの音がピコピコピコピコ...

やはり、全員が納得、妥協できる共通ルールが必要な場面もあるのではないだろうか。

ちなみに、ソフィストはやがて物事が正しいかどうかよりも、議論で勝つためだけの弁論術を教え始めたため、詭弁家と言われ批判されることになってしまった。

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