ヤフーコメント、通称「ヤフコメ」は、社会のあらゆる話題に対する一般の意見が集まるバトルフィールドである。政治、経済、スポーツ、エンタメなど、どんなトピックでも、瞬時にコメントが投下され、そこには激しい議論が巻き起こることもしばしば。しかし、この大海原のようなコメント欄には、一風変わった“名物キャラ”が存在する。それが、「隙あらば自分語り」する人たちだ。

彼らは、まるで海に漂う灯台のような存在だ。話題の中心が嵐のように吹き荒れようが、彼らは揺らぐことなく、自らの人生や経験を語り始める。たとえそれが話題とどれほどかけ離れていようと、そんなことは問題ではない。彼らの語りは、周囲の波に左右されることなく、堂々と存在感を放ち続けるのだ。

例えば、ある日、話題が「少子化問題」に集中していたとしよう。読者たちは、政府の対策や若者のライフスタイルの変化について議論している。そこへ、我らが「自分語り戦士」が颯爽と登場する。彼はコメント欄にこう打ち込む。「私もかつては3人の子供を育てたが、今は独り身だ。妻とは10年前に離婚し、子供たちもそれぞれ独立した。今は寂しいが、あの頃の苦労があったからこそ、今の自分がある。」……少子化の話どこ行った！？と思わずツッコミたくなるが、それが彼らの流儀だ。どんなトピックであろうと、彼らの人生経験はそこに必然的に絡み合う。そして、不思議なことに、その自分語りには妙な説得力がある。周囲が何を言おうが、彼らの語りには「俺は俺」という揺るぎない信念が感じられるのだ。

また、ある日は「最新のスマホ発売」という記事が注目を集めていた。技術革新や価格設定、デザインの議論が繰り広げられる中、彼らは再び姿を現す。「スマホなんて贅沢だよ。俺が若い頃は、家に電話が1台あるだけで十分だった。実家の電話を使うのに、いちいち家族全員に許可を取らなきゃならなかったんだ。今の若者は恵まれすぎてるよ。まあ、今は俺もスマホ使ってるけどな。」……スマホの進化の話をしていたはずなのに、いつの間にか昭和の家族事情の回顧に。彼らは、どんな未来の技術の話であっても、過去の自分を引き合いに出して語らずにはいられない。それはもはや、彼らのDNAに組み込まれているかのような衝動だ。

そして、彼らの真骨頂は、社会問題に関する記事に対するコメントだ。経済格差や失業問題が取り上げられれば、彼らは自らの苦労話を熱く語り始める。「俺は20代で会社を倒産させ、借金を背負ったが、そこから這い上がって今の地位を手に入れた。あの頃は辛かったが、今ではその経験があったからこそ、何でも乗り越えられる自信がある。若い奴らも甘えずに頑張れよ。」……確かに、失業問題には関連するが、やはり主役は「俺」なのだ。彼らのストーリーは、常に「俺がいかにして困難を乗り越えたか」という自己賛美に満ちている。

彼らの自分語りには、ある種の「悟り」が感じられる。人生の荒波を乗り越えてきた者として、彼らは他人に教えを説く権利を持っていると思っている。そして、その語り口には一切の遠慮がない。もしもあなたが「もっと話を聞いてほしい」と思うなら、彼らを見習うべきだ。彼らのように、どんな状況でも自分のストーリーを語る勇気を持てば、あなたもヤフコメ界の「隙あらば自分語り戦士」として君臨できるだろう。

また、彼らの自分語りのパターンにはある種の「芸術性」さえ感じられる。何の前触れもなく、自分語りに突入するそのスムーズさは、もはや一種のパフォーマンスと言えるかもしれない。誰もが驚く展開で、さも話題に関連しているかのように自分の過去を語り始めるそのテクニックは、熟練の技だ。まるでマジシャンが突然ハトを取り出すように、彼らはスッと自分語りを挿入する。そして、そのコメントを見た瞬間、我々は「またか…」と苦笑いしつつ、どこか安心感すら覚えるのだ。

彼らは批判にも慣れている。コメント欄にはしばしば「それ、関係ないだろ」「また自分語りか」といったツッコミが寄せられるが、彼らは微動だにしない。むしろ、その批判すらも「俺もかつては批判されてきたが、それを糧に成長した」という新たな自分語りのネタとして利用するのだ。

もしあなたが彼らのコメントを目にする機会があれば、その背後に隠された壮大な人生模様に思いを馳せてみてほしい。彼らの自分語りは、私たちに笑いと感嘆をもたらし、ヤフコメの世界に一層の彩りを添えてくれる貴重な存在なのである。

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