**飲み会の主役:自分語り上司の華麗なる物語**
ある金曜日の夜、会社の飲み会が開催された。
お酒が進むにつれて、場の雰囲気もどんどん賑やかになっていく中、私たちのテーブルには一人の特異な存在がいた。
その名も、私たちの部署の「自分語り上司」。
彼はまさに飲み会の主役であり、話の中心に居続けることが運命づけられている。
彼の話は、自己紹介の域を遥かに超えていた。
まずは、彼の登場から始まる。
「みんな、今日の飲み会は俺の伝説を聞くために集まったんだろ?」
彼の声が大きく響き渡る。
私たちは、まだ何も食べていないし、正直に言うと、飲み会の意図は少々違っていたが、彼のオーラに圧倒されてしまう。
「俺は大学時代、毎週末に友人たちと合コンを開いて、毎回女性をデートに誘いまくっていた。結局、大学時代に何人の女性とデートしたか、もう覚えていないくらいだ!」と豪語する彼。
周囲の反応は、驚きと苦笑いの交錯だった。
「すごいですね!」と応じる同僚の視線は、彼の話を引き延ばす餌に過ぎないことに気づいている。
話題は大学時代から彼の仕事に移る。
「俺が新入社員の頃、どれだけ苦労したか知ってるか?先輩から厳しい指導を受けたが、逆にそれが俺を成長させたんだ。あのときの経験があったから、今の俺がいる!」
自分の成功をアピールする彼の話は、次第に壮大な神話のように聞こえてくる。
まるで、彼が会社を救ったヒーローであるかのようだ。
その後、彼は自らの趣味に話を移し、「最近はゴルフにハマってる。今度、コースデビューするから、一緒に行く奴いるか?」と振り返る。
正直に言うと、私たちの中には彼とゴルフをすることに対して、全く興味がない者も多かった。
しかし、彼は「やっぱり、ゴルフってのはスコアを気にするものじゃなくて、楽しむものだ。だから、俺は全然気にしないでやってる!」と続ける。
この言葉に、みんなは「それが一番だ」と頷くしかなかった。
飲み会の食べ物や飲み物に目を向ける暇もない。
彼は自分のストーリーを延々と繰り広げていく。
「そういえば、俺の趣味の一つに料理があるんだ。最近、イタリアンに挑戦している。家族や友人を招いて、俺の作ったパスタを振る舞っている。みんな、『おいしい!』って言ってくれるから、もう自信満々だよ!」と誇らしげに語る。
その時、隣の若手社員が「一度、食べてみたいです!」と声を上げると、上司は「じゃあ、今度俺の家に来たら、パスタ作ってあげるよ!」と即答。
会場が盛り上がる中、若手社員は「いや、気を使わせるのも…」と困惑している様子。
上司の心の広さは、彼が自分の話をする際の自己陶酔と相まって、まさに飲み会のエンターテイナーとしての地位を確立していた。
しばらくして、彼はさらに話の方向を変える。
「最近、娘が小学校に入学したんだけど、運動会で頑張っている姿を見て、俺も感動しちゃった。やっぱり、親としての喜びって特別だよな。」
その瞬間、会場の雰囲気が和やかになる。
自分語り上司の顔に柔らかな笑顔が浮かび、周囲も少しほっとしたようだ。
「そうそう、今度の運動会には全力で応援に行くつもりだから、みんなも来てくれよ!俺の娘が走ってる姿を見せるのが楽しみなんだ!」と力強く語りかける。
若手社員たちは微笑みながらも、「いや、行くのはいいですが、忙しいんで…」と気を使う様子。
上司の盛り上がりには逆らえない。
飲み会が進むにつれて、彼の自分語りはさらにエスカレートしていく。
ついには「そういえば、俺の趣味は音楽だ。カラオケに行ったら、絶対に一曲は歌う!」と豪語し、「みんな、今度カラオケ行こうぜ!」と盛り上がる。
周囲の反応は戸惑いの笑い。
誰も彼の音楽センスを確認するつもりはないが、彼の自信に満ちた様子は、周りを楽しませていることに間違いない。
「俺の歌声を聞いたら、みんな驚くぞ!昔から声が大きいって言われてたから、絶対にカラオケのマイクが壊れる!」という言葉に、周りは一斉に笑いをこらえる。
彼の自信満々な姿が、まさに飲み会の主役としての存在感を際立たせていた。
結局、飲み会の最後には、彼の壮大な自分語りはひとまず終息を迎えた。
「今日はみんなと一緒に飲めて本当に楽しかった!また集まろうな!」と笑顔で締めくくる。
周囲の同僚たちは、心からの笑顔で「またぜひ」と応じる。
自分語り上司の存在が、飲み会の雰囲気を盛り上げたことは間違いなかった。
次回の飲み会では、どんな新たな伝説が生まれるのか、今から楽しみで仕方ない。
自分語り上司の物語は、これからも続いていくのだ。
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